生徒の志望理由書の添削を通して、"問いかけ"によるアプローチの有効性に気づいた話

私は個人指導の塾で講師のアルバイトをしているのですが、今年は高校3年生の子を一人担当しています。

 

今日は久しぶりの指導日でした。昨年末は共通テストを受験するので英語の対策をしていましたが、今日は「志望理由書を書きたいです」とのこと。その子は看護系を志望しているので、入試に面接が必須なのです。

 

志望理由を見てみたら、伝えたいことはなんとなくわかるものの、内容がつながっておらずぶつぶつと途切れているように見えました。

 

その子らしさが見えてこないので、とりあえず「なぜ看護師になりたいの?」と聞いてみました。そうしたら、

生徒「母の影響が強いですね」

私 「そうなんだ~。いいじゃない、だんだん具体的になってきた。お母さんのどういうところに影響受けたの?」

生徒「うーん…」

私 「お母さんのどういう姿がいいなぁと思った、とか」

生徒「においが好きだったんです」

私 「におい?」

生徒「病院のせっけんのにおいがして、それが好きだったんですよ」

 

この「母から香る病院のせっけんのにおい」という個人的なエピソードから、

看護師になりたいと思ったきっかけは母の存在

 ↓

幼い時、仕事帰りの母から病院のせっけんのにおいがするのが好きだった

 ↓

自信を清潔に保ち、患者さんに尽くす母の姿を想像

 ↓

母のように患者さんに尽くす看護師になりたい

という、看護師になりたいきっかけのストーリーが生まれました。

 

また、「自身の長所と短所は何ですか?」という質問についても、「コミュニケーション能力」とか「根気強さ」のようなキーワードは挙がったもののそこで止まってしまっていたので、「コミュニケーション能力ってどういうこと?」とその子にとってのコミュニケーション能力について尋ねてみました。

 

そうしたら、コミュニケーション能力をどう捉えているのか具体的なシチュエーションが出てきたので、それをもとに、

私の長所は2つあります。

1つ目はコミュニケーション能力があることです。私は~ができます。この長所を看護の現場で活かし、・・・したいです。

2つ目は…

という長所のテンプレに沿って文章を考えてもらいました。

 

先ほど出してもらった具体的なシチュエーションを「~」の部分に入れると、「コミュニケーション能力がある」という自分の主張をサポートする根拠になります。

 

面接は資料を持ち込むことができないことがほとんどなので、客観的なデータに基づく主張がしにくく、どうしても「自分がこう思っているから」という主観的な主張になりがちです。それでも、ただの主張だけなのか、自分なりの根拠を示して主張できるのかでは大きな差があると感じます。

 

こんな感じで彼女と対話をしていて、ふと「あれ、先日のファシリテーション講座でやった「より良い”問いかけ”を考える4項目」使えてるのでは?」と思いました。

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「なぜ看護師になりたいの?」というのはWhyの問いだし、置き石理論のように関連する小さな問いを重ねることで「母から香る病院のせっけんのにおい」という根本的なきっかけのエピソードを引き出すことができました。そして、「コミュニケーション能力ってどういうこと?」というのは概念の問いにあたります。

 

知らず知らずのうちにより良い問いを投げかけることができていたようです。

 

ファシリテーションでの問いかけは集団へのアプローチ方法ですが、個人との対話においても活用できそうだなと思いました。

 

ファシリテーションで問いを考える際は、上記の4項目に意識的でありたいなと感じました。

 

 

また、私は国語が専門なので今回のような志望理由書や小論文の添削を生徒からお願いされることも多かったのですが、最終的には生徒自身の言葉でまとめるようなイメージでやっています。

 

結局その文章を書くのも、面接で話すのも生徒なので、借り物の言葉ではなく、自分の言葉で伝えられるようになってほしいからです。

 

生徒たちが自分にとってしっくりくる言葉と出会うためのサポートというスタンスは、これからも変わらないのかなと思っています。