「なぜ高校ではアルバイトが原則禁止なのか?」という問いから考えたこと

インタビューの文字起こしをしていたときのこと。

「高校にどんな教育をしてほしいですか?」という質問に対し、ある食品関係の企業の人事担当者は「お金を稼ぐ大切さ・大変さがわかるような教育をしてほしい」と答えていた。そして、「でも、高校にその余裕がないことも重々承知している」と。

 

高校生が自発的に、継続的に働く機会はかなり限定されていると思う。

 

職場体験やインターンシップはあるが、一時的なものがほとんどである。

 

アルバイトをするのも選択肢のひとつではあるが、家計の金銭的事情などがない限りアルバイトを原則禁止している高校がほとんどではないだろうか。

 

この「原則禁止」というのは校則によるものだろうが、校則が法的拘束力を持たないことはほとんど知られていない。私も教職大学院に入ってから知ったくらいである。生徒や保護者が「校則は絶対に守らなければならない(守らざるを得ない)もの」と考えていても不思議ではない。

 

なぜ多くの高校でアルバイトが禁止されているのか、少し調べてみたのだが、「帰宅が遅くなると犯罪などのトラブルに遭遇しやすくなる」というのが理由として挙げられていた。

 

アルバイトをするかしないかは完全に教育課程外のことだ。本人が希望しており、保護者が許可したのであれば、学校がとやかく言う筋合いはないはずである。

 

学校が、校区内のパトロール等、本来であれば教育課程外のことについても気にするようになったのは、社会や家庭の要請にいちいち応えようとしてきた過程で風呂敷を広げすぎてしまったせいなのではないか。

 

また、アルバイト禁止の理由の最上位には「学業を優先させるため」というものがあるが、これも大いに疑問ではある。

 

今まで何人かの人事担当者にインタビューしたが、高卒の入社試験では学業についてはあまり重視していないそうである。(サンプル数が少ないので一般化しすぎている可能性もあるが)

 

それよりも入社試験で見ているのは、ざっくり言うと「コミュニケーション能力」らしい。

 

現状、授業よりアルバイトの方が多様な人とコミュニケーションをとる経験を積めるような気がする。

 

実際のところ、就職の際に学業をそこまで重視しないのであれば、「学業を優先させる」ためにアルバイトの機会を制限するのは生徒の将来を考えると悪手ではないかとさえ思ってしまう。

 

高校で学ばなければならない(とされている)ものは非常に多い。すべてやろうとすれば、みっちり詰まった選択肢の少ないスケジュールになるのは必然。

 

日々の授業や課題をこなすだけで精一杯では、自身の将来について考え、行動に移すことは難しい。

 

やっぱり今のところの最適解(?)は広域通信制なのかなぁ。