以前、『学び合い』の会で「”みんなが溺れる”課題を出すと、全員が必死になって課題に取り組む」という話を耳にした。
”みんなが溺れる”課題というのがあまりピンとこなかったのだが、今日『キュートな数学名作問題集』(小島寛之著)を読んでいて、ある数学の問題を思い出した。
私は中学校を卒業してもう10年以上経つのだが、その問題だけはいまだに覚えている。
それがこちら↓
「円に内接する三角形の面積が最大になるのはその三角形が正三角形の時である」ということを証明せよ。
この問題は推薦入試合格者に対して高校から課された課題の最後の一問だった。
中学の数学は解法パターンを覚え、繰り返し練習すればそこそこ点数を取ることができる。
しかしながら、高校から課されたこの課題は問題を読んだところで解法パターンは全く思い浮かばない。
今思えばググれば解決したのだろうが、当時の私に「ネットで検索する」という考えはなかった。
先生に聞いても、一般入試を受験する生徒にかかりっきりでなかなか教えてもらえない。
やむなく、私はひとりで難問に取り組むことになった。
後にも先にも、こんなに数学に必死になって取り組んだのはこのときだけだ。
いろいろ考えてはみたものの何も思いつかないまま時間だけが過ぎ、結局未完成のまま課題を提出した。終わらないまま課題を提出したのも人生初だったかもしれない。
しかし、なんと閃いてしまったのだ。
よりによって課題を提出した後の帰り道で。
①△ABCが円に内接し、辺BCを底辺にする場合、AB=ACの二等辺三角形になる位置に点Aをとると高さAHが最大になるため△ABCの面積も最大になる。
(AB=AC)
②①と同じように、辺ACを底辺にするとAB=BCの二等辺三角形になる位置に点Bをとると高さBH'が最大になるため△ABCの面積も最大になる。
(AB=BC)
③よって、三辺の長さが等しい(AB=AC=BC)ときに円に内接する三角形の面積は最大になる。
証明の仕方としてはだいぶ乱暴だと思う。
それに、思いついたはいいが、それを数式でどう証明するかは全く分からなかった。
それでも、閃いたときは思わず踊り出したくなる気分だったことを鮮烈に覚えている。
私は中学生の時はいわゆる「上位2割」だったんだろうと思う。苦手な数学でさえ、教科書を読めば教師に出された問題はほとんど解くことができた。
上位2割ですら容易には歯が立たない問題、そうした課題を全員達成することを教師が求めることで”みんなが溺れる”ことになる。
”みんなが溺れる”課題ってこんな感じなのかな、とおぼろげながら何となくつかめたような気がしないでもない。