選挙や政治の話を生徒にするのは難しい…でも伝えるべきことは伝える

『政治の基本は民主主義』という評論を授業で扱ったので、選挙に関してこんな問いを生徒に投げかけてみた。

 

「選挙権年齢が18歳以上になりましたが、あなたは今後選挙に行こうと思いますか?その理由(3行以上)も含め答えなさい」

 

高3の生徒たちなので、すでに選挙権を持っている者もいる。今の高校生は選挙に対してどう思っているのかちょっと興味があった。

 

「あなたが選挙に行こうと思うか、思わないかは正直どちらでもよい。それよりも、今回は自分の意見と整合性のある理由を述べられることの方が大事。」と事前に伝えてあったので、行こうと思う派も思わない派もさまざまな意見が出てきた。

 

・一部の人の意見だけで決められてしまうのは嫌だ

・選挙に行かなければ政治に対して不満やぐちを言う資格がない

・政治には興味がないから行かない

・自分が投票しても変わらないと思う

・自分が目指す社会を実現してくれそうな人を選ぶ

・自分の意見を政治に反映させたい

・選挙や政治について学んだら投票に行くと思う

・せっかく権利があるんだから使いたい

・公約がよくわからない

・ネット投票なら若い人も参加しやすいと思う…などなど

 

今日の授業の頭に返却して、その内容に関してフィードバックをした。

 

「いろいろな考えがあって、みんなしっかり考えてくれたんだなぁというのが伝わってきました」という全体へのコメントから始まり、

・私自身は選挙に行くし、みんなにも行ってもらいたいなとは思うけど、実際どうするかはみんな次第

・今どう思っていたとしても、行動するかどうかはまた別の話

・私がなぜ選挙に行くかと言うと、少数の人たちだけの意見で決められたくないから。最近は特に若い人たち投票率がどんどん下がっているから、選挙に行くような上の年代のための公約が多い。若い人が住みやすくするには、私もそうだし、みんなみたいなこれからの社会を作る人たちが選挙に行かなければならないと思う。

・例えば、みんなのライフプランは知らないけど、出産にいくらかかるか知ってる?基本保険がきかないから50万くらいかかるんだよ。出産でそんなにお金がかかったら、子供を産もうという人は減っていきそうだよね。「子育てしやすい環境を作ります」という公約を掲げた人に投票すれば、そういう現状が変わるかもしれない。

・「政治について学んでから選挙に行きたい」という意見があったけれど、進学したり働いたりしている中で政治について学ぶ余裕があるかというのはちょっと考えてみてほしい。たぶんそんな時間意識しないと作れない気がする。

・だから、選挙の公約を新聞とかで確認するのはもちろんなんだけど、最初は候補者のポスターにあるキーワードを見て「この人に投票したいな」と投票する人を決めるのでもいいと思うんだよね、個人的には。

 

今までは選挙や政治の話を授業でするのは、なんとなくためらわれた。というのも、自分の話が法に反するかどうかの判断が難しく、それなら話さない方がいいやとなっていたからだ。

 

教育基本法には以下のような条文がある。

第8条 (政治教育) 良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。

② 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

 

政治的教養と政治教育・政治的活動の線引きが自分の中で曖昧だったのだ。曖昧だからこそタブーになっていたのかもしれない。

 

ただ、選挙権年齢が引き下げられ、主権者教育の重要性が叫ばれる中、選挙や政治の話をタブー視してはいられない。

 

伝えるべきことはきちんと伝えなければ。

そのために自分自身の考えをアップデートしていかなければならないと感じた。