水色の装丁がきれいで思わず目を引く、こまつあやこさんの『ポーチとノート』。
主人公の未来は私立の女子高に通う高校二年生。
中学生のころから、自分の中に湧き起こるさまざまな気持ちを水色のノートに書き留めることで整理しています。
未来は親友の芽衣といつも下校時間ぎりぎりまで居座っている図書館で、司書補の保坂さんと出会い、恋に落ちます。
保坂さんの「コトバは∞」という展示をきっかけに、人工言語であるエスペラントに興味を持った未来は、エスペラントで日記を書き、それを保坂さんに読んでもらうことに。
しかし、未来には誰にも言えない身体の悩みがあり、なかなか恋に対して積極的になれません。
そんな未来がまわりの人たちの影響を受け、だんだん自分と向き合えるようになり、変わっていきます。
この作品には魅力的な人がたくさん出てきます。特に、未来の祖母であるアサエさんは明るくポジティブで、ちょっと大人げないけど、どこか憎めない人。
アサエさんは未来の10歳の誕生日の日、父や母もいる食卓で生理用のナプキンが入ったポーチをプレゼントし、未来はそのプレゼントに戸惑います。そして、そのポーチは今も未来の机の鍵付きの引き出しの中。なぜなら、未来はいまだに月経が来ていないという身体の悩みを抱えていたからなのです。
未来とは違いますが、私自身も他者からは見えにくい部分に身体の悩みを抱えていたので、未来の悩みがお話の中で明らかになってからは、ぐいぐいストーリーに引き込まれました。
・自分でもなんとかしなきゃとは思っているものの、どうやって情報を手に入れればいいのかわからない。
・まわりの人には自分の悩みは絶対に言えない。
・一人で病院に行くのは怖いけれど、まわりに心配されるのも嫌なので、病院には行ったことにしてしまう。
↑こんな未来の思いが手に取るように伝わってきました。
今はネットで容易に検索できる時代になったし、セイシルや#つながるBOOKなど、自身の身体などについて知ることができるようなサイトから情報を得ることができるようになってきています。
情報へのアクセスに加え、未来にとってのアサエさんや芽衣のような悩みを打ち明けられる身近な人の存在は、今後生きていく上でとても大切であると感じました。