『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治著)
本屋の特集コーナーで平積みにされているのを見かけてからというもの、ずっと読みたいと思っていた。
褒めること、自信をつけさせることは良いことか
問題児と言われるような ”困った子”(実際は(本人が)困っている子なのだろうけど)に対して、「褒める」「自信をつけさせる」というアプローチはよく聞くものである。
「得意なことを伸ばしてあげる」ことは根本的な解決にはなっていない、というのが筆者の主張である。苦手なことをそれ以上させない、というのはその子の可能性を潰すことになる可能性もある。
「問題が発生している場合の「褒める教育」は、問題の先送りにしかなりません。」という筆者の考えは、頭の中に入れておかなければと思った。
歪んだ自己評価
自身が抱える問題や課題を解決しようとするには、まず自己の姿を適切に評価できなければならない。「自分に問題はない!」と思っている段階では、自分を変えようという気は起らないからだ。
適切な自己評価をするためには、他者と関わることが必要不可欠である。他者の反応を受けて自己にフィードバックしていくということを繰り返すことによって、適切な自己評価を育むことができる。
自尊感情が低いことは悪いこと?
「自尊感情が低いため、向上させなければ」という話もよく聞く。
先ほどの自己評価のところと重なるのだが、自尊感情が低いこと自体が問題なのではなく、実態と合わない自尊感情であることが問題なのではないか。
自尊感情はまわりの環境や出来事によって大きく左右される。
何か人の役に立てたら自尊感情は上がるだろうし、大きな失敗をしたら自尊感情は低下してしまうだろう。いつ測定するかによって結果は大きく変わる。
常に自尊感情が高い(低い)人はまれだと思う。
「自尊感情が低い」というのは思考停止ワードになりかねない。
昨年「自己肯定感」について少し研究していたときに何となくもやもやしていたことが、この本によってちょっとすっきりした。
本の最後の方に出てきた、
「子どもの心に扉があるとすれば、その取手は内側にしかついていない」
このフレーズは印象的だった。
結局自分で何とかしようと思わなければ人は変わらないのだ。そして、何がきっかけでその扉が開くかはわからない。
教師だけでなく、まわりの子どもたちが「トントンッ」といろいろな方法で繰り返しノックしていくのが大切なのかなぁと思う。