短編集の中でも、各短編の登場人物につながりがある作品が好きです。
今までに読んだ作品で言うと、有川浩さんの『阪急電車』のような。
こうした作品は、伏線の張り方・回収の仕方が上手だなと思います。
1冊読み終わると、お話全体が一つの円になるような。
「あ、この人1つ前の作品に出てた!」「次はどんな人が主人公になるんだろう」と、わくわくしながら読み進めることができます。
この青山美智子さんの『木曜日にはココアを』には、「マーブル・カフェ」という名前のカフェを中心とした12のお話が詰まっています。お話の舞台は東京とシドニー。
それぞれのお話には色にまつわるものが出てきます。
ココア、運命の赤い糸、オレンジ色のサンドイッチ屋さん、卵焼き…
特にタイトルに出てくるココアは、1話目の「木曜日にはココアを」と最後のお話の「恋文」の両方に出てきます。
さきほど本を読み終わったばかりなのですが、このブログを書こうと再度1話目から眺めていたら、この2つのお話の素敵な共通点を見つけました。どちらも心がほっこりと温かくなるお話です。
最も印象に残ったフレーズが、「ラルフさんの一番良き日」というお話の中に出てきます。
家事が得意なラルフさんはひとりで暮らすのはさほど困らないけれど、ベランダの花が咲いたとき、「見てごらん!」と言える相手がいないことはさびしいな、と思っていました。(p.139)
私は一人旅が好きです。自分の好きなように日程を組み、自分のペースで行きたいところにいけるところがその魅力です。学生のときはいろいろなところに一人で行っていました。
ただ、一人旅が好きな一方で、旅の最中にそこはかとない寂しさを感じていました。
当時はその寂しさを言語化することができずにいたのですが、先ほどのフレーズを目にして「あぁ、私は旅先で「ねぇ、見て見て!」と、ちょっとした感動を共有できる誰かを欲していたんだなぁ」とふと思いました。
私が将来一人ではなく、パートナーとともに生きていきたいと思うのも、日常のちょっとした感動・ときめき・ワクワク・うれしさを共有したいからなのかも。
この作品には『月曜日の抹茶カフェ』という続編があります。
今回のお話に登場していて気になっていたものの、まだ主人公としては描かれていない「ピーちゃん」という人物がいるので、続編でその人のお話を読むのが楽しみです。