『こころ』の授業を通して、生徒にどうしても伝えたかったこと

今日は3クラスで夏目漱石の『こころ』の最後の授業をした。夏休み明けから始め、中間考査を挟んで20時間以上の長丁場だった。

 

この『こころ』の授業は、私がひたすらしゃべる"解説"と『学び合い』で進める"演習"を組み合わせてきた。

 

演習の前に解説があることで生徒たちも安心したのか、授業の状態も安定してきた。

 

その一方で、演習の時間は全員達成を生徒たちにあまり求められていないなと感じていた。生徒たちの要望でネームプレートを使わなくなったこともあり、達成状況の可視化ができなくなったため、なあなあで済ませてしまっていた。

 

前後の語りも毎回そこまでしっかりやっているわけでもない。

 

それでも、今日はどうしても伝えたいことがあったので、事前に内容を考え、心を込めて語った。

 

教科書に載っている『こころ』にはKの心情が全く書かれていないので、Kがどう思って自殺を選択したのかというのはわからない。それは、読む人が想像するしかない。だから、これから話すのはあくまで私の解釈ね。

Kが自殺してしまったのは、頼れるつながりがすべてなくなってしまったからだと思う。Kはすでに家族から勘当されていて「お前なんか家族じゃないから帰ってくるな!」と言われていた。だから、「私」が唯一信頼できる人だったんだよね。でも、その親友である「私」にも結局裏切られてしまったので、人とのつながりがすべて絶たれてしまった。だから、自殺してしまったんだろうと思う。

私はみんなには絶対に自殺してほしくないと思っている。そう思うのはなぜかというと、私は知り合いを自殺で亡くしているからで、そのとき本当に辛かったのね。だから、みんなにはそんな思いをしてほしくないと思う。

社会に出たら、自分が困った時は「助けて」と言わないと助けてもらえないことの方が多い。だから、困った時は「助けて」、わからない時は「教えて」って言えるようになってほしい。その方が生きやすいと思う。そして、まわりに困っている人がいたら手を差し伸べられるような人になってほしい。

社会に出て働くようになったら、会社の人との人間関係がメインになる。週5で働いていると他のつながりは作りにくい。だから、高校までの人とのつながりがとても重要になってくる。

私がみんなに裁量を持たせて、任せる授業をしているのは、こういう意図があるんだよね。

↑こんなことを語った。

 

登場人物が自殺してしまうお話など、教科書を見渡しても『こころ』くらいしかない。

だからこそ、どうしても伝えたかった。

 

授業後、ある生徒が私を呼びとめて、「「今つらいことばかりでいなくなりたい」と言っている友達がいた場合、将来楽しいことがあるかどうかなんてわからないから、なんと声を掛ければいいかわからない。先生ならどう言う?」という質問を投げかけられた。

 

一瞬詰まったが、「「それでも私はあなたに死んでほしくない。生きていてほしい」と伝えるかな」と答えた。

 

私はどんなに苦しくても自ら死を選んだら終わりだと思っている。もちろん異論はあるかもしれないし、私のエゴに過ぎないと言われてしまえばそれまでなのだけれど、それでもこれからの未来を担う生徒たちには絶対に自殺してほしくない。

 

私の伝えたいことが、たとえほんの一部でも生徒たちに伝わっていたらいいなと思う。