『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』(三宅香帆)読了

中間考査の問題はできてるし、来週の授業準備も一応できてるし、いいよね、いいよね!」ということで、この週末は(研究のことはいったん頭から追いやって)ひたすら読書をしている。

先日衝動買いしてしまったこの本。

まずタイトルの長さにびっくり。そして、その長いタイトルが表紙の半分以上を占めるデザインに一目ぼれ。

 

しかも、帯に書いてある、この本で紹介されている名作小説のほとんどが、私が読もうと思って挫折した本・まだ読んだことのない本なのだ。

カラマーゾフの兄弟』、『吾輩は猫である』、『老人と海』、『ドグラ・マグラ』…

読む前からワクワクしてしまう。

 

この本は二部構成になっており、第1部は面白く小説を読む技術をエッセイ的に書いたもの、第2部は名作小説の解説になっている。

第1部の中でいいなぁと思ったのは次の2つ。

①小説の「読み方」に注目!

この本は、「書く」方ではなく「読む」方に注目するという作者の目の付け所がおもしろいと思う。

「小説の書き方」の本は本屋にたくさん売られていますが、「小説の読み方」の本はなかなか本屋で見かけることはありません。不思議だと思いませんか? ものを書く人よりも読む人のほうが、ずっと多いはずなのに。

でもこれって、「小説を書くのはめっちゃ難しいけれど、読むのは誰にでもできる」と思われているからじゃないでしょうか。(pp.5-6)

まえがきにある作者のこの指摘は目からうろこだった。

 

小説の読み方は小学校~高校までの国語の授業で習うが(なんなら私は教えている側だけれど)、”おもしろく読むコツ”は二の次になっている。

「本を読みましょう」と言うけれど、「おもしろく読むにはどうすればよいか」は各個人に委ねられている気がする。

 

幸い私は小説を読むのが好きで、「妄想力全開で読む」とか「登場人物になりきって読む」など、自分なりの”おもしろく読むコツ”を手に入れることができた。

しかし、それは何冊も読んだうえでのこと。1冊読んで「つまらん…」となり、本を読む習慣がなくなってしまうのはもったいない(と私は思う)。

 

第2部で紹介されているのは、作者にとっての「おもしろポイント」なのだが、まずはそれをもとに名作小説を読んでみる、というのもいいなと感じた。

 

 

②小説を読むのに適したタイミングとは?

作者は、いわゆる「積ん読」も名作を読むには必要なことだと言う。

なぜそのまま読まずに積んどくべきかというと小説には「その小説が生み出された根本的な理由になる悩み」が存在している、と前章で言ったことが背景にある。(中略)

そして私が思うに人生において、本来もっとも小説を読むに適したタイミングは、「自分と本当に切実な悩み」と「小説において描かれている切実な悩み」が重なった瞬間だと思う。(pp.26-27)

これは、必ずしも登場人物と同じ経験がなければ小説を読めないということではない。小説のテーマと自分が抱えるテーマが呼応したときが、その小説の読みどきだということ。

 

自分が抱えるテーマは、年齢や生まれた地域、置かれた状況によって変化しうる。だから、幼い頃大好きだった作品を大人になって読んでみて「何でこんなに好きだったんだろう?」と首をひねったり、昔は難しくて放り出してしまった本が今になって急におもしろいと思うようになったりする。

 

その小説の読みどきまであえて放置するというのも、おもしろく読むために必要なことなのかもしれない。

 

 

第2部は作者が選んだ20の小説を「読んだふりにしないコツ」をもとに解説している。

私の推しは『若草物語』(L・M・オルコット)と『亜美ちゃんは美人』(綿矢りさ)。

若草物語』、もう一度読んでみようかな。

『亜美ちゃんと美人』は作者のコツに従って読んでみようっと。