子どもたちの思いに耳を傾けること

昨夜、NHKの「ウワサの保護者会」で長期休校中の子どもたちの声が取り上げられていた。

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子どもたちの声、と一口に言っても内容はさまざまだった。

・学校に行けなくてイライラ

・学校が再開して友だちと前みたいに仲良くできるか心配

・再開後授業のスピードが上がったらついていけるか不安

・何をすればいいかわからなくてダラダラした

 

そして、番組の終盤に出てきた「大人に言いたい!」メッセージがこちら↓

9月入学や夏休みをどうするかなど 学校のことを大人だけで決めないで子どもの意見も聞いてほしい(小6女)

学校があるのは何のため?(小5男)

 

それに対する苫野さんのお話が印象に残っている。

「学校や大人は、子どもたちに一方的に与えるのではなく、子どもたちの声を聞くことが大事ですね。
学校でも「先生も、困っているんだよ」と子どもたちに相談してこれからのやり方を一緒に作っていけば、子どもは立派な仲間になってくれるはず。」

 

 

「ウワサの保護者会」だけ見る予定だったのが、その後23時からEテレの特集が再放送されると知り、急遽予定変更。

特集のタイトルは「7人の小さき探究者 ~変わりゆく世界の真ん中で~」。

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気仙沼市の小泉小学校の6年生7人の、卒業式100日前から卒業式当日までを追ったドキュメンタリーである。

 

小泉小学校では全国に先駆けて"p4c(philosophy for children(こどものための哲学))"という対話の取り組みを行ってきたそうだ。p4cは東日本大震災を機に宮城県の学校で導入されているのだという。

(p4cについて、詳しくはこちら→http://p4c-japan.com

 

7人の子どもたちは円になって座り、みんなで決めたテーマについて自分の考えを述べたり、聞いてみたいことを尋ねたりしていた。

 

そして、場面は6年生を送る会へ。全校のみんなでゲームをしたり、踊ったりして楽しんだ後、会の終わりに先生から子どもたちへ休校の決定が告げられた。

「今日で学校に来るのは最後です。」

顔を覆う子、涙を流す子、納得いかないという顔をする子…

 

6年生を送る会終了後、下校までの限られた時間に6年生7人がやったのは、”対話”だった。突然の休校宣言に対し、一人一人が思いを口にする。

「社会的に子どもは認められていない」

「(大人が)子どものころにこういう経験(=コロナの影響で臨時休校)があったら子どものことを考えられるが、こういう経験をしていないから考えられないんじゃないか」

「大人って何?」

「私は大人になりたくない」

「大人になりたくないけど、でもなりますよね」

 

突然の休校宣言で心の中はぐちゃぐちゃだったはずなのに、子どもたちの口から紡がれる言葉は驚くほど深いものだった。

「子供も意見を言いたい」「なんで勝手に決めるんだ!」という一方的な意見ではなく、社会で子どもがどういう立ち位置なのか、大人の立場に立ったら、というように自身をメタ認知した上で対話をしている姿に目が離せなかった。

 

このドキュメンタリーでは、休校後の7人の様子や考えていることについても記録している。私は、その中で「まる」さんという女の子の言葉に強く惹きつけられた。

・形だけの大人であって本当の大人ではない

・経験して感じたこと学んだことが子どもよりもいっぱい詰まっているのが本当の大人

・どれくらい経験を積めば本当の大人になるかはわからない

・完璧な大人はいない

・みんな形だけの大人なのかもしれない

・子どもたちも考えてるってことをどこかで見せつけたい

 

今は20歳で成人とされているが、20歳になったと同時に大人になるのかというと、必ずしもそうではない気がする。一方で、この7人の子どもたちのように物事について冷静に、深く考えることができる子たちもいる。

 

今回の休校やそれに伴う子どもたちを取り巻く環境の変化について、「当事者である子どもたちの考えも聞くべきだ」という考えを耳にする機会も多い。私自身そう思っているし、その考えをSNSで発信したこともある。

 

しかし、「当事者である子どもたちの考えも聞くべき」と言いながら、私は子どもたちの声に耳を傾けてきたのだろうか。口だけ人間になってはいなかっただろうか。

 

私は現場で働く教員ではないし、子どもをもつ保護者でもない。教員を目指すひとりの大学院生である。子どもたちと接する機会は学習塾でのアルバイト等しかなく、限られている。

 

「ウワサの保護者会」に出てきた子どもたちやドキュメンタリーで描かれた子どもたちがすべてではない。それでも、まずは自分のまわりにいる子どもたちの思いや考えに耳を傾ける必要があるなと実感した。