『キャリア教育のウソ』読了

キャリア教育のウソ (ちくまプリマー新書)

キャリア教育のウソ (ちくまプリマー新書)

 

「キャリア教育のウソ」という タイトルだけをみると少々過激なのだが、内容についてはエビデンスをもとに現在の(俗流)キャリア教育のからくりやワナを明確にし、今後キャリア教育がどうあるべきか筆者の考えが示されている。

 

気になった部分を備忘録的に以下に記しておこうと思う。

 

”ストレーター”はなんと半数以下

2012年の段階の高校入学者の総数を「100人村」の住人に例え、その後のキャリアを各種統計に基づいて推計すると、新卒就職をしてその3年後も就業継続をしている者は41人しかいないそうだ。

筆者はこのグループを“まっすぐなキャリアを歩んでいる人”という意味で「ストレーター」と名付けているが、それは全体の半分以下なのである。つまり、同世代の半分強はどこかでつまずいたりやり直しを余儀なくされたりしているということだ。

 

キャリア・アンカーとキャリア・アダプタビリティ

キャリア・アンカー:個人の職業生活における「錨」のポジション。転職を繰り返したとしても、その根っこに通じている軸や価値観のようなもの。

キャリア・アダプタビリティ:職業生活上の変化への適応力。“いざという時”へのレディネス(準備)と対処能力。

 

「やりたいこと」偏重のキャリア教育

筆者の考えでは、キャリア教育には

①生徒に「夢」や「やりたいこと」を見つめさせ、目標に向けた努力を促すという役割

②生徒の希望と「現実」との“折り合い”をつけさせる役割

という2つの役割があるのだそう。

しかしながら、(俗流)キャリア教育は前者に偏りがちであるため、「やりたいこと」「やれること」「やるべきこと」という視点のバランスが重要になってくる。

 

変化の激しい社会では、たとえ正社員になれたとしても、その後のライフステージにおいて会社が倒産したり、解雇されたり、非正規雇用になったりすることは決して珍しいことではない。

 

これからの個人は、”組織が自分のキャリアを開発してくれる”ことを期待するだけではおそらく立ち行かない。そのため、”個人が自己のキャリアを自律的に開発していく”ことが求められると筆者は言う。

 

筆者がキャリア教育において必要だと考えるのは、以下の5点である。

①「非正規」での働き方の多様な形態、それぞれのメリット・デメリット等についての学習

②次のステップ(例えば、正社員への転換)への見通しの立て方の学習

③公的な職業訓練や求職者支援などについての情報提供

④労働法についての学習、相談・支援機関についての情報提供

⑤同じプロセスを歩むことになる者どうしの仲間づくり

 

特に⑤は西川先生の話と重なる部分もあった。

学校にいるうちに、その後の将来においても頼りになるネットワークを築いておくことが、いざというときのセーフティネットになるのだろう。

 

学校を、そうしたつながりを作ることができる場にしていきたい。